この事例の依頼主
50代 女性
相談前の状況
Gさんは、ご長男が亡くなられて、その遺産の内容が分からずに相続手続きに困っていました。特に、ご長男の債務にどのようなものがあるかが分からない一方で、Gさんがご長男に知らせずに貯めていた預貯金については放棄したくないという気持ちもあり、相続放棄か限定承認のいずれを選択すべきかを迷っておられました。Gさんは、何人かの弁護士に限定承認についても相談していましたが、限定承認は手続きが煩雑であるからなどの理由で依頼を受けてもらえずにいました。そうしたところで、当時事務所のHPをご覧になり、相談に来られました。
解決への流れ
弁護士は、Gさんから聞き取った内容からすると、確かに、単に相続放棄してしまうと、Gさんが貯めていた預貯金の権利もなくなってしまいかねない状況でした。また、ご長男の過去の生活状況等からすると、債務額が高額になっているとは思われない状況でした。そこで、弁護士は、多少手続が煩雑であるとしても、相続放棄ではなく、限定承認を選択することが合理的であると判断し、限定承認での依頼を受けることにしました。その後、債務の調査や裁判所への提出書類の整理などを経て、「相続の開始があったことを知った時から3か月以内」(民法915条)という期限までに、無事に限定承認の申述を完了することができました。さらに、限定承認後の清算手続きまで弁護士が委任を受けることとし、Gさんに代わって最後まで対応することとなりました。
限定承認が利用されている件数は、相続放棄に比べると、手続が煩雑であるなどの理由から、非常に少ないといわれています。しかし、一定の遺産があり、債務が少ない可能性がある場合には、限定承認は非常に有用な手段ということができます。本件では、一定の預貯金があり、債務がそれを大きく下回っている可能性がある事案であったため、限定承認を利用すべきケースでした。Gさんは、簡単に諦めずに、早期に弁護士へご相談に来られたことで賢明な選択をすることができたといえます。