14478.jpg
詐欺加害者の転居情報回答義務、最高裁は判断せず 日本郵便への「弁護士会照会」めぐる訴訟
2018年12月21日 15時24分

愛知県弁護士会が詐欺被害者のために、加害者の転居届けの情報を照会した際、日本郵便に回答義務があるかをめぐって争った裁判で、最高裁は12月21日、「確認する利益がない」として、回答義務について判断を示さず、却下した。判決後に会見した同弁護士会の石川恭久弁護士は「最高裁が司法の役割を自ら限定した」と指摘したものの、下級審の判断から「実務上の影響はない」との見解を示した。

弁護士会照会制度とは、裁判の証拠や資料収集などのために、弁護士の申し出を受けて、弁護士会が対象となる情報を保持する団体等に照会する弁護士法に基づく制度。罰則規定はない。

訴訟は、2011年12月に、被害者の男性と同弁護士会が、回答義務の確認と損害賠償を求めて日本郵便を提訴。2016年10月、最高裁は、損害賠償を認めた名古屋高裁判決を破棄。一方、回答義務については、「審理が尽くされていない」として、名古屋高裁に差し戻していた。2017年6月、名古屋高裁は、今回の転居届けの情報についての回答義務を認める判決を出したが、日本郵便が上告していた。

最高裁は判決の中で、弁護士会照会制度について、「報告を求める私法上の権利を付与したものとはいえ」ないと指摘。報告義務があるとする判決が確定しても「任意の履行を期待するほかないといえる」「紛争解決に資するものとはいえない」とした上で、「(回答義務についての)判決を求める法律上の利益はない」として、確認の利益を認めなかった。

会見に臨んだ石川弁護士は、「確認訴訟の機能を限定的に考えたものにすぎない」と指摘。実際の判断としては、2017年6月の名古屋高裁において、報告義務が日本郵便の守秘義務に優越して報告義務があることをを明言していることを踏まえて、「(回答義務の守秘義務に対する優越が)実体上はっきりした」との見解を示した。実務の運用は「変わらないと思う」と述べた。

石川弁護士によると、2017年の日本郵便に対する弁護士会照会件数は276件あり、うち回答拒否が130件(拒否率:47.1%)。照会全体の拒否率は4%程度で、「日本郵便の拒否率はとても高い」とも指摘した。

日本郵便は「当社の主張が認められたもので結果は妥当。(今後、本件の照会については)適切に対応していく」としている。

(弁護士ドットコムニュース)

愛知県弁護士会が詐欺被害者のために、加害者の転居届けの情報を照会した際、日本郵便に回答義務があるかをめぐって争った裁判で、最高裁は12月21日、「確認する利益がない」として、回答義務について判断を示さず、却下した。判決後に会見した同弁護士会の石川恭久弁護士は「最高裁が司法の役割を自ら限定した」と指摘したものの、下級審の判断から「実務上の影響はない」との見解を示した。

弁護士会照会制度とは、裁判の証拠や資料収集などのために、弁護士の申し出を受けて、弁護士会が対象となる情報を保持する団体等に照会する弁護士法に基づく制度。罰則規定はない。

訴訟は、2011年12月に、被害者の男性と同弁護士会が、回答義務の確認と損害賠償を求めて日本郵便を提訴。2016年10月、最高裁は、損害賠償を認めた名古屋高裁判決を破棄。一方、回答義務については、「審理が尽くされていない」として、名古屋高裁に差し戻していた。2017年6月、名古屋高裁は、今回の転居届けの情報についての回答義務を認める判決を出したが、日本郵便が上告していた。

最高裁は判決の中で、弁護士会照会制度について、「報告を求める私法上の権利を付与したものとはいえ」ないと指摘。報告義務があるとする判決が確定しても「任意の履行を期待するほかないといえる」「紛争解決に資するものとはいえない」とした上で、「(回答義務についての)判決を求める法律上の利益はない」として、確認の利益を認めなかった。

会見に臨んだ石川弁護士は、「確認訴訟の機能を限定的に考えたものにすぎない」と指摘。実際の判断としては、2017年6月の名古屋高裁において、報告義務が日本郵便の守秘義務に優越して報告義務があることをを明言していることを踏まえて、「(回答義務の守秘義務に対する優越が)実体上はっきりした」との見解を示した。実務の運用は「変わらないと思う」と述べた。

石川弁護士によると、2017年の日本郵便に対する弁護士会照会件数は276件あり、うち回答拒否が130件(拒否率:47.1%)。照会全体の拒否率は4%程度で、「日本郵便の拒否率はとても高い」とも指摘した。

日本郵便は「当社の主張が認められたもので結果は妥当。(今後、本件の照会については)適切に対応していく」としている。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る