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「司法試験問題」ロースクール教授が漏えい――どうすれば防げるか? 関係者に聞いた
2015年09月08日 18時51分

今年の司法試験で問題作成を担当した明治大学法科大学院の教授が試験前、教え子の受験生に問題の内容を漏らしていたとして、法務省は9月8日、国会公務員法の守秘義務違反で刑事告発した。報道によると、法務省の調査に対して、教授は問題を漏えいしたことを認めているという。

この教授は、明治大学法科大学院で「憲法」の授業を担当していた。今年5月の司法試験では、問題作成などをおこなう「考査委員」をつとめたが、試験前に問題作成に関わった「憲法」の論文試験の内容を教え子の受験生に漏らした疑いがある。

法務省は9月8日、司法試験の公正性・公平性に対する信頼を根底から損なったとして、この教授を考査委員から解任した。さらに、教え子の受験生については、試験の採点対象から除外して、今後5年間、司法試験受験を禁止するという処分を下した。

司法試験をめぐっては、2007年にも、考査委員だった別の法科大学院の教授が試験前、教え子の学生向けに答案作成の練習会を開いて問題になった。このような不正を防ぐには、どうすればいいのか。法科大学院出身の弁護士、司法試験考査委員の経験者、そして、今年合格した受験生という3人の「関係者」に意見を聞いた。

今年の司法試験で問題作成を担当した明治大学法科大学院の教授が試験前、教え子の受験生に問題の内容を漏らしていたとして、法務省は9月8日、国会公務員法の守秘義務違反で刑事告発した。報道によると、法務省の調査に対して、教授は問題を漏えいしたことを認めているという。

この教授は、明治大学法科大学院で「憲法」の授業を担当していた。今年5月の司法試験では、問題作成などをおこなう「考査委員」をつとめたが、試験前に問題作成に関わった「憲法」の論文試験の内容を教え子の受験生に漏らした疑いがある。

法務省は9月8日、司法試験の公正性・公平性に対する信頼を根底から損なったとして、この教授を考査委員から解任した。さらに、教え子の受験生については、試験の採点対象から除外して、今後5年間、司法試験受験を禁止するという処分を下した。

司法試験をめぐっては、2007年にも、考査委員だった別の法科大学院の教授が試験前、教え子の学生向けに答案作成の練習会を開いて問題になった。このような不正を防ぐには、どうすればいいのか。法科大学院出身の弁護士、司法試験考査委員の経験者、そして、今年合格した受験生という3人の「関係者」に意見を聞いた。

●システムの問題? それとも個人のモラル?

2004年から制度がスタートした法科大学院(ロースクール)の1期生で、司法試験予備校の教員をつとめている西口竜司弁護士は「今回の漏えい問題は、氷山の一角ではないか」「法科大学院の教員が考査委員をつとめていることが問題だ」と分析する。

「そもそも法科大学院は少人数の教育。教授といえども人間なので、気にかけている教え子を『受からせてあげたい』という人情を持っている。そこに、法科大学院の生き残り競争という背景もあり、結果的に行き過ぎた指導になっているケースが起きているのではないか。裁判官や司法研修所教官を考査委員にするほうが公平だろう」(西口弁護士)

新司法試験がスタートして、今年でちょうど10年となる。法務省の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に「考査委員の選考理由・過程は公表していない」と答えた。なお、司法試験考査委員に占める「学者」の数は、初年の2006年が96人中44人(45.8%)だったのに対し、2015年は131人中37人(28.2%)と、その割合が低下している。

一方、司法試験の考査委員をつとめた経験をもつ人物は、今回の漏えい問題について「『守秘義務を守る』という当たり前のことができていないだけだ」と指摘する。「法科大学院の教員が問題作成をしているから問題が起きたということではないと思う。学者を排除すれば、試験問題に『少数意見』などへ配慮が欠けたり、偏りが出てくる可能性がある。結局は、個人のモラルの問題だ」

●合格者「今年の『憲法』の問題は難しかった」

法務省が刑事告発をおこなった9月8日は、ちょうど司法試験の合格発表当日。天候はあいにくの雨だったにもかかわらず、東京・霞が関の法務省の掲示場には、合格者番号を確認する受験生やその家族ら数百人が詰めかけた。

二度目の受験で合格したという弁護士志望の男性は「今年の『憲法』の問題は難しかった」と振り返った。そのうえで、「よりによって、あれだけ影響力のある教授が・・・と思った。絶対にあってはならないことだと思う」と話した。

試験問題の漏えいを防ぐ方法について、この男性は「憲法の問題は実務家だけで作るのは難しいと思う。同じ学者が、長期間にわたって考査委員をつとめることをやめたらよいのではないか」と語っていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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