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バッティングセンターで「死球」の危機・・・ケガをしたら賠償を請求できる?
2016年01月02日 08時25分

東京都内の大学に通うマサシさんは、ふだんから通っているバッティングセンターで、思わぬ災難に見舞われた。

いつものようにバッティング練習をはじめようと打席に立つと、普段ではあり得ないくらい内角にえぐる球が飛んできた。時速100キロほどと、ものすごい速球ではなかったため、マサシさんはギリギリで球をかわすことができた。

1ゲームが終わった後に転がっていたボールを見たところ、ボールは相当使い込まれた様子でツルツルだった。そのため変化球がうまく曲がらなかったことが、コントロールの乱れた原因のようだ。

もし利用者が普通にバッターボックスに立っていたのに「死球」が当たってケガをしまった場合、施設側に補償を求めることは可能だろうか。それとも、自己責任で片付けられてしまうのか。國安耕太弁護士に聞いた。

東京都内の大学に通うマサシさんは、ふだんから通っているバッティングセンターで、思わぬ災難に見舞われた。

いつものようにバッティング練習をはじめようと打席に立つと、普段ではあり得ないくらい内角にえぐる球が飛んできた。時速100キロほどと、ものすごい速球ではなかったため、マサシさんはギリギリで球をかわすことができた。

1ゲームが終わった後に転がっていたボールを見たところ、ボールは相当使い込まれた様子でツルツルだった。そのため変化球がうまく曲がらなかったことが、コントロールの乱れた原因のようだ。

もし利用者が普通にバッターボックスに立っていたのに「死球」が当たってケガをしまった場合、施設側に補償を求めることは可能だろうか。それとも、自己責任で片付けられてしまうのか。國安耕太弁護士に聞いた。

●施設側には、利用者の安全に配慮する義務がある

「施設側に補償を求める余地は十分あると思います」

國安弁護士はこのように述べる。どうしてだろうか。

「ある契約関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間においては、単に契約で期待された利益の実現のために必要な行為をするだけでは、義務を果たしたといえません。

相手方の生命・身体・財産への侵害がないように必要な配慮をする『信義則上の義務』があると考えるのが、今日的な理解です。

こうした考え方にしたがえば、施設側は、単にピッチングマシンを利用できるようにするだけでなく、利用者がケガをしたりすることがないよう配慮する義務を負っていると考えられます」

今回のケースについては、どう考えればいいだろうか。

「利用者が普通にバッターボックスに立っていたにもかかわらず、死球を受けてしまうような状況は、こうした配慮義務に違反しているといえます。

したがって、利用者は、施設側の義務違反(債務不履行)を理由に、損害賠償請求をできる可能性があります」

●ピッチングマシンは「土地の工作物」

「また、民法上『土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う』(717条1項)とされています。

土地の工作物とは、土地に接着して人工的作業を加えることによって成立した物をいいます。工場内に設置された機械等もこれにあたると考えられています。

そのため、バッティングセンター内に設置されたピッチングマシンも、土地の工作物にあたるという解釈は十分成り立ちうるでしょう。

そして、瑕疵とは、その物が本来備えているべき性質または設備を欠くことを意味します。利用者が普通にバッターボックスに立っていたにもかかわらず、死球を受けてしまうような状況は、本来備えているべき性質または設備を欠くといえます。

したがって、利用者は、工作物の瑕疵を理由に、損害賠償を請求できる可能性もあります」

今回の相談者は、機械よりもボールに問題があったと考えているようだ。

「もっぱらボールのみに問題があったような場合、工作物責任を追及するのは難しいかもしれません。

なお、いずれの場合でも、ボールを避けることが可能であったとして、過失相殺(賠償額が減額)される可能性が高いと思います」

國安弁護士はこのように分析していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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