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退職代行「モームリ」に家宅捜索「弁護士を紹介」なぜ問題? 弁護士法の背景から読み解く
2025年10月22日 13時36分
#退職代行 #モームリ #弁護士法

報酬を得る目的で法律事務を弁護士にあっせんしたなどとして、警視庁が10月22日、退職代行サービス大手「モームリ」の運営会社に家宅捜索に入ったことが報じられました。

TBSなどの報道によると、「モームリ」の運営会社「アルバトロス」の本社の他、都内の法律事務所も家宅捜索を受けたとのことです。

アルバトロス社には、弁護士資格がないのに退職代行の仕事を弁護士にあっせんし、紹介料を受け取っていたとして、弁護士法違反の疑いが持たれています。

いわゆる「非弁」と呼ばれる行為ですが、退職代行業者が弁護士に仕事をあっせんすることが、なぜ禁止されているのでしょうか。

報酬を得る目的で法律事務を弁護士にあっせんしたなどとして、警視庁が10月22日、退職代行サービス大手「モームリ」の運営会社に家宅捜索に入ったことが報じられました。

TBSなどの報道によると、「モームリ」の運営会社「アルバトロス」の本社の他、都内の法律事務所も家宅捜索を受けたとのことです。

アルバトロス社には、弁護士資格がないのに退職代行の仕事を弁護士にあっせんし、紹介料を受け取っていたとして、弁護士法違反の疑いが持たれています。

いわゆる「非弁」と呼ばれる行為ですが、退職代行業者が弁護士に仕事をあっせんすることが、なぜ禁止されているのでしょうか。

●弁護士法が禁止する「非弁行為」「周旋」と「非弁提携」

弁護士法では、以下の行為は禁止されています。

(業者側)

「非弁行為」:弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件に関する事務を行うこと

「法律事務の周旋」:報酬を得て、弁護士を依頼者に紹介すること(非弁行為に準じる行為として72条後段で禁止)

(弁護士側)

「非弁提携」:弁護士が、非弁行為を行う者から事件を紹介してもらうこと

●弁護士でない者が行う「非弁行為」「周旋」(弁護士法第72条)

まず、「法律事件」に関する手続きや交渉は、法律の専門家である弁護士にしか許されていません。

弁護士資格を持たない一般の企業や個人が、報酬を得る目的で他人の法律問題に関わることを「非弁行為」といいます。

退職代行が非弁行為にあたるかどうか、ということも問題(東京地裁令和2年2月3日など参照)ではあるのですが、今回の報道とは関係が薄いのでここでは省略します。

今回モームリが疑われているのは、「法律事務の周旋」、つまり報酬を得て弁護士を紹介していたのではないか?という点です。

つまり、自分で交渉を行う代わりに、依頼者を弁護士に紹介し、その対価としてキックバックを受け取っていたのではないか、との疑いをもたれています。仮にこれが本当であれば、法律事務の「周旋」として、非弁行為(弁護士法72条)にあたると考えられます。

●弁護士が行う「非弁提携」(弁護士法第27条)

今回のケースでは、弁護士側も処罰される可能性があります。

弁護士は、非弁行為を行う業者から事件を紹介してもらったり、提携したりすることが禁止されています。これを「非弁提携」といいます。

●なぜ禁止されるのか、そして罰則は?

弁護士法がこれらを禁止している理由は、依頼者を守るためです。

まず、法律の知識がない人が法律問題に関わると、解決どころか、かえって事態を悪化させたり、本来得られたはずの利益を失わせたりするリスクがあります。

さらに、弁護士から非弁業者へのキックバックが発生すると、弁護士が本来守るべき依頼者の利益よりも、業者に支払うキックバックの原資や、業者との関係維持を優先してしまう可能性があります。弁護士の公正さや独立性が損なわれるのを防ぐことも重要なのです。

弁護士法の規定は、法律問題の処理を、専門知識と倫理規定を持つ弁護士に限定することで、依頼者をこうした不利益から守る役割を果たしています。

この法律に違反した場合、業者側(非弁行為・周旋)も、弁護士側(非弁提携)も、それぞれ「2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」という刑事罰が科される可能性があります(同法77条1号(弁護士側)、3号(業者側))。

また、弁護士は刑事罰とは別に、弁護士会から業務停止や除名などの懲戒処分を受ける可能性があります。

「キックバック」は、一見するとビジネス上の慣習に見えるかもしれませんが、法律の世界では、依頼者の利益を害する行為として、罰則の対象となるのです。

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